このKIRIN Lumenコラムでは、全4回にわたり、私たちの体で毎日起きている「代謝」について、わかりやすく解説していきます。 「代謝」と聞くと、「太りやすさ」や「カロリー消費」を思い浮かべる人も多いかもしれません。
第1回では、まず「そもそも代謝とは何か」、そして「体が何を燃料にして動いているのか」を見ていきましょう。
「代謝がいい/悪い」は、何がいい/悪いのか
「最近、代謝が落ちた気がする」
年齢とともに体重が増えやすくなったときや、以前と同じように運動しても手応えを感じにくくなったとき、よく使われる言葉です。 しかし、体重が増えたことだけで、「代謝が落ちた」と判断することはできません。
そもそも代謝とは、体の中で行われているさまざまな化学反応の総称です。 食べ物から得た栄養素を分解する。体をつくる材料に変える。生命活動に必要なエネルギーを取り出す。 こうした反応によって、私たちは体を動かし、考え、体温を保ち、眠っている間も生命活動を続けています。

つまり、「代謝=カロリーを消費すること」だけではありません。 この記事では、その中でも、体がどのような燃料からエネルギーを得ているのかというエネルギー代謝に注目します。 エネルギー代謝には、「どのくらいエネルギーを使っているか」という見方だけでなく、 「何をエネルギー源として使っているか」という見方もあります。
研究では、体が取り込む酸素の量と吐き出す二酸化炭素の量などから、糖質や脂質がどの程度エネルギー源として酸化されているかを推定する方法が古くから用いられています[1]。
体は、糖質と脂質を主な燃料として使っている
私たちの体が活動するために使う代表的なエネルギー源が、糖質と脂質です。
糖質と脂質って何?
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糖質 |
脂質 |
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どんなもの? |
炭水化物のうち、主にエネルギー源として使われる成分 |
油や脂の主な成分で、エネルギー源などとして使われる栄養素 |
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多く含む食品 |
ごはん、パン、麺、いも、果物など |
肉、魚、乳製品、ナッツ、植物油など |
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体内では? |
ブドウ糖などになり、エネルギー源として利用される |
脂肪酸などになり、エネルギー源として利用される |
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蓄え方 |
一部はグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられる |
主に中性脂肪として脂肪組織に蓄えられる |
体を動かしているときだけでなく、座っているときや眠っているときにも、私たちは糖質や脂質からエネルギーを得ています。 ここで大切なのは、「糖質を使っているから、脂質はまったく使っていない」というわけではないことです。
通常、体は糖質と脂質の両方をエネルギー源として使っています。
そのうえで、食事や運動、そのときの体の状態などに応じて、糖質を使う割合が大きくなったり、脂質を使う割合が大きくなったりします。 たんぱく質も状況によってエネルギー源になりますが、日常のエネルギー代謝を理解する第一歩としては、まず糖質と脂質という2つの主要な燃料に注目するとわかりやすいでしょう。
「何を燃料として使うか」は、いつも同じではない
糖質と脂質を使う割合は、1日中同じではありません。
食事をすれば、入ってきた栄養素に応じて体の燃料の使い方は変化します。 また、運動をすると必要なエネルギー量が増え、運動の強さによっても燃料の使い方が変わります。一般に、運動強度が高くなるほど、糖質をエネルギー源として使う割合が高まりやすいことが知られています[2]。
つまり、私たちの体は、そのときの状況に合わせて糖質と脂質の使い方を変えているのです。

糖質にも脂質にも、それぞれの役割がある
ここで大切なのは、「糖質を使うのが悪く、脂質を使うのが良い」というわけではないことです。
糖質は、特に運動などで素早く多くのエネルギーが必要なときに重要な燃料です。運動の強度が高くなるほど糖質を使う割合が高まりやすいのも、そのためです[2]。
一方で、脂質も私たちの体を支える大切な燃料です。 体脂肪が減っていく過程では、脂肪組織に蓄えられた脂肪が分解され、脂肪酸としてエネルギー源に使われます[3]。 そのため、脂質をエネルギーとして使うことは、体脂肪が減っていく過程の一部になり得ます。
ただし、「いま脂質を多く使っている=いま体脂肪がそのまま減っている」という意味ではありません。 体が使う脂質には、脂肪組織に蓄えられた脂肪だけでなく、食事から入ってきた脂質などもあります。
また、食事から摂るエネルギーが使うエネルギーを上回る状態が続けば、体脂肪は蓄積する方向に働きます。
そのため、長期的な体脂肪の変化は、その瞬間に何を燃料として使っているかだけでなく、食事から摂るエネルギーと使うエネルギーなどの積み重ねで考える必要があります[4]。 糖質と脂質はどちらも大切な燃料であり、体はそのときの状況に応じて使い分けているのです。
では、「年齢とともに代謝が落ちた気がする」のはなぜ?
ここで、冒頭の話に戻ってみましょう。
「年齢とともに体重が増えやすくなった」
「以前と同じように運動しても、手応えを感じにくくなった」
こうした変化には、実際に年齢が関係することがあります。 年齢とともに筋肉量などが減ることで、何もしていないときにも使われるエネルギーである「基礎代謝量」は低下する傾向があります。
一方で、体重が増える理由は、基礎代謝量の変化だけではありません。 普段どのくらい体を動かしているか、どのくらい食べているか、筋肉量や体脂肪量がどう変化しているかなど、さまざまな要因が関係します。

そのため、「年齢とともに体重が増えた=代謝そのものが単純に悪くなった」とは限らないのです。
大切なのは、「代謝がいい・悪い」というひと言で考えるのではなく、
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どのくらいエネルギーを使っているのか
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何をエネルギー源として使っているのか
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食事や運動によって、それがどう変わっているのか
と分けて考えることです。
第2回では、食事や運動によって、1日の中で糖質と脂質の使われ方がどのように変化するのかを、もう少し詳しく見ていきます。
この記事のポイント
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代謝とは、体の中で起こるさまざまな化学反応のこと
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体は糖質と脂質を主要な燃料として使っている
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糖質と脂質を使う割合は、食事や運動などによって変化する
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糖質と脂質にはそれぞれ役割があり、どちらが良い・悪いというものではない
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脂質を使うことは体脂肪が減る過程の一部になり得るが、長期的な体脂肪の変化は食事やエネルギー消費などの積み重ねで決まる
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体重が増えたことだけで「代謝が落ちた」と判断することはできない
参考文献
[1]J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol. 1983 Aug;55(2):628-34.
[2]J Appl Physiol (1985). 1994 Jun;76(6):2253-61.
[3]Trends Endocrinol Metab. 2003 Oct;14(8):386-92.
