【第2回】体が使う燃料は、1日の中で変わる——食事と運動で変わる糖質と脂質の使い方

【第2回】体が使う燃料は、1日の中で変わる——食事と運動で変わる糖質と脂質の使い方

朝食を食べる前に30分歩く。夕食を食べたあとに30分歩く。

歩く速さも時間も同じなら、体の中で起きていることも同じ——と思うかもしれません。ところが、同じ運動でも、体が糖質と脂質を使う割合は同じとは限らないのです。

体は、食事をしたか、どのくらいの強さで運動しているかなど、そのときの状態に合わせて、燃料の使い方を絶えず変えているからです。

こうした変化を知ると、「食べたあと」「空腹のとき」「運動したとき」に、自分の体がどのように反応しているのかを考えるヒントになります。第2回では、糖質と脂質の使われ方が、1日の中でどのように変わるのかを見ていきましょう。

燃料の使い方は、食事で変わる

わかりやすいのが、食事の前と後です。食事、特に炭水化物を摂ると、消化・吸収された糖質が体内に入り、エネルギー源として利用されたり、一部が蓄えられたりします。

そのため一般に、食後は糖質を使う割合が高まりやすく、食事から時間がたつにつれて脂質を使う割合が高まりやすくなります[1]。

ただし、「食後=糖質だけ」「空腹時=脂質だけ」というわけではありません。体は常に糖質と脂質の両方を使いながら、そのときの状態に応じて割合を変えています。

燃料の使い方は、運動の強さでも変わる

燃料の使い方を左右するもう一つの大きな要因が、運動の強さです。

ウォーキングなど比較的強度の低い運動では、脂質がエネルギー供給に比較的大きく貢献します。一方、運動強度が高くなるにつれて、糖質を使う割合は高まる傾向があります[2]。

ただし、どのくらいの運動強度で脂質を多く使うかは、人によって異なります。年齢や体格、体力など、さまざまな要因によって脂質の利用量は変わることが報告されています[3]。

糖質と脂質には、それぞれ得意な場面がある

ここまで読むと、「脂質を使っている方が良いのでは?」と思うかもしれません。

しかし、糖質と脂質のどちらかが常に良く、どちらかが悪いわけではありません。それぞれに、使われやすい場面があります。たとえば強度の高い運動では、体が必要とするエネルギーに対応するため、糖質への依存が高まります[2]。これは正常な体の反応です。反対に、低〜中強度の運動では脂質の利用割合が高まりやすくなります。

ただし、「運動中に脂質を多く使うこと」と「長期的に体脂肪がより多く減ること」は、同じではありません。一回の運動での脂質消費だけでなく、継続的な運動によるエネルギー消費や食事の内容なども、長期的な体脂肪の変化に関係します。

同じ運動でも、食事とのタイミングで燃料の使い方は変わる

では、冒頭の「朝食前に30分歩く」「夕食後に30分歩く」では、何が違うのでしょうか。代謝を考えるうえでは、単純な「朝か夜か」という時刻だけでなく、次のような、そのときの体の状態も関係します。

  • 食事からどのくらい時間がたっているか

  • その前に何を食べたか

  • 直前に運動しているか

  • 体内にどのくらい糖質が蓄えられているか

実際、健康な男性10人を24時間観察した研究では、同じ運動でも、朝食前に行った場合には、昼食後や夕食後に行った場合よりも24時間の脂質酸化量が多かったことが報告されています[4]。

また、複数の研究をまとめたメタ解析でも、1回の有酸素運動中では、食後より空腹時に運動した方が、脂質酸化量が多くなる傾向が示されています[5]。

つまり、同じ人が同じような運動をしても、そのときの体の状態によって、使われる燃料は変わり得るのです。

空腹時に脂質を多く使えば、より痩せやすい?

空腹時に運動すると、食後より脂質をエネルギー源として使う量が増えやすいことがわかっています[5]。つまり、運動の内容が同じでも、「いつ行うか」によって体の燃料の使い方は変わり得るのです。

ただし、脂質を多く使ったからといって、そのまま長期的に体脂肪がより減るとは限りません。空腹時と食後の運動を比較した長期研究では、体重や体組成について空腹時運動の明確な優位性は示されていません[6]。

「脂質を使って運動すること」と「たくさんエネルギーを使うこと」は、別の視点です。

長期的な体脂肪の変化を考えるときは、運動中に糖質と脂質のどちらを多く使ったかだけでなく、日々のエネルギー摂取と消費のバランスを考えることが大切です。

では、いま自分の体が糖質と脂質のどちらをより多く使っているのかを、どのように知ることができるのでしょうか。代謝研究では古くから、呼吸で取り込む酸素と吐き出す二酸化炭素の関係から、体が使っている燃料を推定する方法が用いられてきました。

次回は、「呼吸から、なぜ体が使っている燃料がわかるのか」を見ていきます。

この記事のポイント

  • 体が使う糖質と脂質の割合は、1日の中で変化している

  • 食後は糖質を使う割合が高まりやすく、食事から時間がたつと脂質を使う割合が高まりやすい

  • 運動強度が高くなるほど糖質を使う割合が高まりやすいが、糖質利用が「悪い」わけではない

  • 同じ運動でも、食事やそのときの体の状態によって、使われる燃料は変化する

  • 脂質を多く使うことと、長期的な体脂肪の変化は同じではない

参考文献

  • [1]Cell Metab. 2017 May 2;25(5):1027-36.

  • [2]J Appl Physiol (1985). 1994 Jun;76(6):2253-61.

  • [3]Sports Med. 2023 Dec;53(12):2399-2416.

  • [4]EBioMedicine. 2015 Dec;2(12):2003-9.

  • [5]Br J Nutr. 2016 Oct;116(7):1153-64.

  • [6]J Funct Morphol Kinesiol. 2017 Nov 25;2(4):43.